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日本酒できるかな その11 ~吟醸の 正体みたり 蒸し回し~

♪愛のママに~っ 我がママに~っ!
 ボクは黄身だけを傷つけない~


こんばんわ~。R-1グランプリ以降すっかりサイクロンZに夢中ななかやんです。

♪鯉が走りだしたら~
 君が止まらない~

あれって替え歌の新しい解釈ですよね。

でも中山功太よかったなあ。優勝して。時報ネタも面白かったし。
これでお父さんの会社倒産しても安心だね。




とまあ、くだらないお話はさておきお酒を造っていて特に痛感したこと。

それは「吟醸ってこんなに手間ヒマかけてるのかあ!」という単純なオドロキ。



吟醸って高いのはやっぱりコストがかかるから。
精米歩合を下げればその分原料費もかかるもんね~くらいにしか思ってませんでした。
酒蔵で働くまでは。



いやいやいや、そんな甘っちょろいもんじゃあなかったです。
厳重な温度管理はもちろんのこと、いろんな部分で大きな労力が必要になってくるのです。


まず大変なのが袋洗い。
斗瓶囲いと言って、もろみを絞らずに布袋(実際は樹脂製。ポリプロピレンっぽかった。)に入れて重力で滴り落ちるしずくだけを集めた吟醸酒がありますが、この布袋、ちょっと気を抜いただけですぐにニオイがついてしまうというやっかいもの。


そのため、この袋を使う何日も前から一日一回丁寧に冷水で水洗いして薬品消毒と手洗いを繰り返し行うのです。薬品が少しでも残っていたら大変ですからすすぎは一つの袋につき何回も何回も。

冷水で指が千切れそうになりながら、何十枚もある袋をすすいでいきます。

単純作業ではあるのですが正直、酒蔵の中で一番キツかった仕事かも。

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          ⇒斗瓶囲い用の袋。これを何十枚も用意する。



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          ⇒たらいの中で丁寧にすすいでいく。






この水仕事も冷たくてつらくてキツイ仕事なんですが、吟醸を作るためにはもっと大変な作業も。

それが蒸し回し。



蒸したお米は麹・酵母・水とともにタンクのなかで発酵を促してもろみにするわけですが、蒸し米の乾燥度合いによって発酵する速さが変わってきます。

すなわち、ふっくらしたお米の方がより早く水に溶け、乾燥した蒸し米ほどゆっくりと発酵が進む。


吟醸酒をつくるためにはよりゆっくりと発酵をさせる必要があるため、ある程度乾燥させた蒸し米を準備する必要があるわけです。

乾燥していてもデンプンはアルファ化してないといけない。中に芯が残ってちゃいかんのですね。


中はふっくら、表面はカピカピなお米が理想的。
そんなお米を作るために行うのがこの蒸し回し。

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          ⇒蒸した米を薄く広げて表面を乾燥させてます。


この蒸し回し、こっからが大変な作業。

よくおにぎりなんかをお皿の上に置いておくと表面だけ乾きますよね。
でも中はしっとししたまんま。

そう、ご飯ってやつは表面しか乾燥しないわけです。

理想的な蒸し米を作るためには全部の米をできるだけ均等に乾燥させたい。


そのためにどうやるか。
答えはカンタン。ダンゴ状に固まったお米を手でちぎってポロポロにしてやればいいのです。
そう、まるでご飯からパラパラチャーハンを作るように。

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          ⇒こういう状態の蒸し米を



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          ⇒こういうふうにポロポロにしていくわけですな。




チャーハンと違うのは卵の力を借りられないところと、その膨大な米の量。



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           ⇒こーーーんだけの量を全て手作業でパラパラにしていく。
            6人がかりで約半日仕事。うひーーー。




いやー。こんだけ労力かかってるんだったら吟醸って高いわけだ。
つーかこんだけ大変なのに1升3000円とか安すぎるくらいじゃない??


これから吟醸酒飲むときはもっと大事に飲むように心に決めたなかやんなのでした。


もう、イッキとかやめましょうね。I野さん。
裸「なにー!ワシの酒が飲めんのかーーー!」
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by umanichi | 2009-03-30 14:08 | 大人のできるかな  

日本酒できるかな その10 ~もろみ作り~

酒母を作り出して数日もすれば、甘酸っぱいようななんとも言えない芳しい香りがぷうんと鼻をつくように。


それにしてもこんな環境で仕事ができるなんてうらやましすぎる職場じゃないの(笑)


な~んて思いながら、朝から仕事していると突然大音響で鳴り響き出すクラシックの音楽。



ん?これはまさか「日本酒にモーツァルトを聞かせると微生物の活動が促されて酒が美味しくなる」ってアレですか?でもホントなのかなあ。個人的には眉唾もんかなあ、と思ってるんですが。


裸「いや、違うんよ。わし真央ちゃん好きじゃけえ。今年は月の光じゃろおが。」



・・・・・。


そ、そういや昔っからロリコンでしたね。I野さん・・・・



まあ「お酒にクラシック」に効果があるかどうかはともかく、悪い方向にはいかんよね。
音楽聴きながら働ける職場ってのもいいもんだし。


とかなんとかいいながら毎日仕事してるとそのうち酒母が完成してきます。
最初はしっかりしたツブツブだった蒸し米も、日が経つにつれ徐々にどろどろのお粥状態に。
見た目はどろりとした甘酒のようなイメージです。


これを濾して少し飲ませてもらってみたところ、お酒とは程遠い味ですが、これはこれでうまい。
アルコール度数も少なく、甘酸っぱい。まるでお米で作ったリキュールのよう。

これ、女性向けに売ってみたら意外といい線いけるんじゃないかな。

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          ⇒出来あがった酒母。
           二酸化炭素の発生で泡だっており、中はドロドロ。






出来上がった酒母は仕込み用の大型タンクに移されます
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そしてそこに麹、蒸し米、水を追加し徐々に量とアルコール度数を増やしていくのです。


この追加するとき、一度に追加せず3日で3回にわけて少しずつ追加していくのがポイント。
一度に追加してしまうと酵母が頑張りすぎて疲れてしまうんですって。

いっぺんに量を増やすと酵母に負担がかかりすぎるため量を少しずつ増やして酵母の働きをコントロールしてやるのがこの「三段仕込み」の目的。

これは江戸時代くらいから伝わる方法らしいのですが、微生物の存在も知らないのに三段仕込みを編み出した先人の知恵には驚くばかりですね。





もろみを仕込んで日にちが経つと、もろみからぷくぷくと泡が立ってきてピチン、パチンと泡がはじける音がしてきます。

これ全て二酸化炭素。そのためタンク内は二酸化炭素が充満しており、落っこちたらまず窒息死は免れません。



そのタンクの上を安全帯もつけず、手すりもない通路をほほいのほいっと飛び歩くI野さんたち。
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さすがのなかやんもこればっかりはマネできませんでした。




でもこのタンクの上、めちゃめちゃいい香りがするんです。
吟醸香のもととなってるのは化学的にはエステル基。こいつは水に溶けにくく、泡がはじけるとともに揮発する可能性が非常に高い。だからタンクの上はこの吟醸香が常に漂ってるんですね。


この香りをいかに飛ばさずにお酒の中に残すか、ってのが杜氏の腕の見せ所だったりもするわけです。

ううむ。奥が深いぜ。




もろみが完成すれば、あとは絞るだけ。
絞ったらほとんどお酒は完成です。
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by umanichi | 2009-03-22 15:49 | 大人のできるかな  

日本酒できるかな その9 ~ お酒の土台をつくっていこう【酒母つくり】 ~

麹ができあがったら、次に作るのは酒母。

以前、「糖」を分解して「アルコール」を作るのは「酵母」の仕事、と書きましたがこの酵母をまずはたくさん培養しなければいけません。


他の雑菌の繁殖を抑えながら酵母をたくさん培養してやる。


これが酒母作りの目的なんですね。



酵母ってのは日本醸造協会で頒布されるのが普通。

大体、どこの酒蔵もこの協会に属していて、そこで酵母を頒布してもらうのだとか。


んで、この酵母ってのもまた面白いもんで、この酵母の違いでお酒の香りが全然変わってくるとのこと。

裸:「香りだすだけなら簡単なんよ。酵母変えりゃあええけぇなあ。でもなぁ、酒の味にあった香りにせんとおえん。そこが難しいとこなんじゃ」


そうなんですか。ふーむ。
単純に吟醸香だけあれば美味しい酒ってわけじゃないですもんねえ。



んで、肝心の酒母の作り方ですが、タンクに水・麹・酵母・乳酸を入れて軽く攪拌。
そこへ蒸し米を入れてやります。

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           こういうタンクに入れていく。
           保温のため白い断熱材を巻いている。



蒸し米は粒がしっかりしていてどちらかというと固めで弾力がある感じなのですが、その姿は日ごとに変わって行きます。水分を吸い、麹や酵母に分解されることにより、徐々にお粥状の物体に変化。


酵母も糖分を食べてどんどんと増殖していきまして、日が経つにつれ独特の甘い香りがしてくるのがわかります。

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          発酵の進んだ酒母。
          酵母の作用でプクプクと泡(二酸化炭素)が。
          そばに近寄るとぷうんといい香り^^
 
          乳酸を入れるのは雑菌の繁殖を抑えるため。
          山廃仕込みってのは乳酸を入れない手法だが、雑菌繁殖のリスクがある。





そして、この酒母は毎日「櫂(かい)」と呼ばれる特殊な攪拌棒により攪拌してやる必要があるのですが、ここで重要なポイントが。


米は絶対に櫂で潰したり割ったりしてはいけないのです。
麹や酵母の力で化学的な反応で米を溶かすにはいいのですが、櫂などの物理的な力で米を潰す行為はご法度。そのため櫂入れを行う際は細心の注意が要求されます。


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          これが、櫂。
          使うたびに水洗い・熱湯消毒・過酸化水素による殺菌する。



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          櫂入れに挑戦。
          両手をふさいだまま高所にあがるので、ちと怖い。

          粥状の酒母の中にズブリと櫂を入れたら
          溜まったガスがぷっしゅううううっと
          このガスもいい香りです。




この酒母の出来上がりを左右するのが温度管理。
タンクにジャケットシート(中に冷水が通る細管がたくさん入ったシート)を巻いて温度を下げたり、「暖気樽(だきだる)」と呼ばれる湯たんぽ状の樽をタンクに入れて温度を上げたり・・・。

そうやって上手に温度をコントロールしながら、酵母と麹に狙い通りの活動をさせてやるのが杜氏の腕の見せ所。この辺はかなりのノウハウがあるみたいで、少し説明してもらったのですが相当高度な勘どころで狙いの温度を決めているようです。

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          黒いジャケットを巻いたタンク
          白いホースから冷水が供給され、黒いジャケットの中を通る。
          そして金属製のタンクと熱交換され、タンクが冷却されるという寸法。


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          酒母に沈められた暖気樽。
          中にはお湯が入っており、酒母を直接温める。



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          暖気樽の周りだけ酵母が活性化し、泡立っているのが
          おわかりいただけるだろうか。
          暖気樽周辺からあたためられるため、ここだけ酵母が活性化する。






実はプラント工学を専攻したこともあるなかやん。
この手の熱管理はお手の物。狙いの温度にするためにどのような手法を取れば、安価で効果的な温度管理が出来るかについてI野さんに提案してみたところ大変喜ばれました。
いやあ、これで少しは恩返しすることができました^^



そんなこんなで10日もすれば酒母ができあがってきます。



さあ!お酒完成までもう一息!!
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by umanichi | 2009-03-13 14:57 | 大人のできるかな  

日本酒できるかな その8  ~ やりすぎ麹ぃ ~

蒸したお米の一部は30度くらいまで冷却したあと、麹をつくるために「室(ムロ)」と呼ばれる部屋に運ばれます。


このムロは麹菌の繁殖のため、30℃~40℃くらいに保温された言わば「麹菌繁殖専門室」。
厳寒の蔵の中にあってここだけは亜熱帯な温度になるわけですから、その温度差に慣れるのにも一苦労。


またこの温度域は麹菌のみならず他の最近も繁殖しやすい温度帯のため、蔵の中でも特に消毒に気を使う部屋。

ですから出入りするときにはもちろん手洗い・消毒を入念に。



この部屋で蒸し米の上にもやし(麹の種ですな)をパラパラと振りかけたらいよいよ作業開始です。



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もやしを蒸し米に均一にいきわたらせるように、また温度も均一にするようにもやしのかかった蒸し米を「練りちぎって」いきます。


この「練りちぎる」という表現が的確なのかどうかはよくわかりませんが、これは今までみたことのない特殊な動作。

山のように固まった粘性の高い蒸し米を裂くというかちぎるというかこね合わせるというか・・・。

いや、こねてダンゴにするわけじゃないんですけどね。
蒸し米ってのはおもったよりも固くて、少々こねたりしてもつぶれたり糊状になったりせず粒々のカタチを保ったまんま。

なのでこの「練りちぎる」という作業を通して、米の粒子の表面にまんべんなくもやしを付着させていってるのでしょう。




ちなみにI野さん達が上着もズボンも脱いでいるのは、ムロの中があついこともさることながらムロへの雑菌の侵入を最小限に抑えるため。服やズボンには外部からの雑菌が付着しやすいんですって。

脱いでいるのはI野さんが裸族の酋長だから・・というわけではありません。多分。



裸「おえ!何をぶつぶつ言よんなら!おめぇも早う脱いで手伝えぇ!」

え・・・ボ、ボクも脱ぐんですか??

裸「当たりめぇじゃろうが!おめぇなんか特にばい菌多そうじゃけえシャツも脱げえ!」

ひ、ひいいいいっ!や、やめてくださいっっっ!!!


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          ⇒板野さんにひんむかれてしまったなかやん。
           これはもしや去年ひんむいたイノシシの呪いか。




しかし写真で見てもわかるように、結構な量でしょ?
これ全部練りちぎっていくの思ったより大変。
しかも気温は亜熱帯。真冬なのに体中ぽっかぽか。
裸でも暑いくらい。



練りちぎり終わった米はまた一まとめにして断熱シートをかぶせてしばらく放置。

放置している間に、どんどんと麹菌が米の中に繁殖していくわけです。


麹菌が繁殖するとともに発生してくるのが熱。
菌といえども生命体なわけですから、活動するとともに、繁殖するとともに発熱してきます。

そして温度が高まってきたところで再度練りちぎり。
あんまり温度が高まりすぎても麹の活動が弱まってくるんですね。

ちょうどいい温度まで放冷するためにも練りちぎって、内部の熱を逃がしてやる必要があるのです。


この作業を一日数回繰り返し。

丸一日たった米は麹菌の活動のおかげで水分が若干抜けて表面がカピカピに。
ダンゴ状の米も手に握ってグワシ!と力を加えるとパラパラと崩れていきます。




パラパラにした蒸し米はムロの中にある製麹装置に入れて布をかけておきます。

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          ⇒製麹装置



これは麹の温度を管理するための装置。
麹米の中に温度計を差し込んでおいて、その温度が一定となるようにファンがまわったりとまったり。いわゆるフィードバック制御というヤツですね。


この装置がなかった時代は人がずううっと24時間張り付いて温度を管理しなければいけなかったそうで、それはそれは大変な作業だったそうです。



そして製麹装置でさらに一日置いておくとキレイな麹が出来上がります。
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          ⇒しっとりと固まった麹。手でつつくとカンタンにほぐれる。





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          ⇒パラパラにほぐれた麹



ちょうどいい加減に繁殖した麹。
このまま暖かいところにおいておくと麹が繁殖しすぎてしまうので、この辺で繁殖をとめてやらなければなりません。



これを板の上に薄く広げて、表面を波状にしてムロから出して冷却してやります。
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          ⇒接写。表面にびっしりと白い菌糸が繁殖しているのがわかるでしょうか。



こうやって麹が完成します。
麹を食べてみると、少し乾燥はしているものの中はしっとりとしており、かすかな弾力を感じたあとにホロリと崩れます。そしてかみ締めていくとあとからほんのりとした甘みが追いかけてくる感じ。
香りは茹でたての栗を思わせるようななんとも官能的な甘い香り。


裸「うめかろーが。ワイも子供の頃からコレが好きでなあ。蔵に遊びに来ちゃあ、麹をポリポリ食べよーったんよ。」


はい!確かにこれはなんともいえん旨さです。ポリポリ。特にこの香りがいいですね。


裸「このなあ、温度を管理していくんが難しいんよ。ちょっと時間を過ぎると温度上がりすぎることもあるしな。うまーく麹菌を繁殖させていくんは勘とコツと経験を上手く組み合わせんと絶対にできんのんじゃ」


なかなか奥の深い世界なんですね。もやしは買うことが出来るみたいですが、それを繁殖させていくのは杜氏の仕事。蔵によって麹の出来栄えはまるで違うそうです。



今回は長きにわたって麹の作り方を書いてきました。

特殊な作業でしたね。
少し、難しかったですか?(←いがわゆり蚊のチェンバル語講座風に)


では次回またお会いしましょう。
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by umanichi | 2009-03-07 11:26 | 大人のできるかな  

日本酒できるかな その7 ~熱湯甲子園~

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          →蒸しあがった米


蒸しあがった米は余分な熱を加えないよう、そして所定の温度にするようにすぐに冷却しなければいけません。




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          専用のスコップですくいあげ






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          水色の台車にのっけます。



この台車、下に白い穴があいてますよね。
台車をファンのある場所まで運び、ファンを起動して中に風を送るんです。
そうして、蒸した米を冷却するという次第。



裸「米に風をあてるだけじゃあおえんのんじゃ」

・・・い、I野センパイ??

裸「茶碗に乗せたご飯を考えてみい、そこに扇風機で風当てても中の方までは冷えりゃあせまーがな」


はっ!!言われてみれば・・・
そういえば寿司米作るときもしゃもじでかき混ぜたりしながらうちわであおぐよね・・・。

じゃあ、やっぱりしゃもじかなんかで??


裸「あほうか!そんなことしたら大事な蒸し米がつぶれたりするし、能率が悪かろうが。ええか、こうやるんじゃ!!」




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          こうする





推定100度近くの蒸しあがったばかりのお米たち。
ファンを回しながらとはいえ、その高熱の物体に勇猛果敢に素手を突っ込む光景はさながら熱湯風呂に飛び込むダチョウ倶楽部の姿を見るよう(そういやこのリアクション芸ももはや古典芸能の域まで達してますな)。



裸「こうやってやるんじゃ。おめーもはよ手伝え」


はいっ。


・・・

・・・・

・・・・・





あぢー!!!





思わずトムが尻尾をカニに挟まれたときの声が出そうになってしまった。


しかし、こんなところでリアクション芸を見せている場合ではない。
米を潰さないように慎重に、なおかつスピーディに米を攪拌しなければならない。


大きな塊があったら中まで冷えない。
なるべく小さく分けるように混ぜながら全体を均等に冷やすようなイメージで攪拌していく。


うん、こりゃちょっとさぬきうどん作るときの水まわしに似たような作業かもしれない。

まさかうどん打ちのテクが酒作りで生かされることになろうとは。
人間なんでも体験してみとくもんだね。



裸「よっしゃ、ストップじゃ」

I野さんの掛け声とともに全員の手が止まる。
冷却の終了を判断するのは杜氏の大切な仕事。


お米は仕込み用の蒸し米と麹用の蒸し米と別々に分かれてるんだけど(甑の中で間に布引いて二層に分かれてる)、それぞれで理想の温度域が違う。


別に温度計で測っているわけじゃないんだけど、こんなにたくさんの米の温度ってさすがにムラがあるから器具に頼るよりも手で米全体の平均値を把握したほうがよっぽど確実だし早い。この辺は杜氏の勘どころかな。


なかやんの手で触ってみたところ麹用は30度ちょい、仕込み用は15度から20度くらいまで冷やしてるような気がする。



この2つの内「仕込み用の米」は水・麹・酵母とともにタンクに入り、モロミになります。



そして、「麹用の米」は粉末状の麹の種(「もやし」と呼ぶそうです。まんが「もやしもん」ってこれが由来なのかな)を振りかけて麹を作る工程に。


次回は麹を作る作業を書きたいと思います。
お楽しみに。
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by umanichi | 2009-03-06 08:23 | 大人のできるかな  

日本酒できるかな その6 ~いよいよ米を蒸す~

野性爆弾東京進出バンザーイ!!!(やりすぎコージーより)

昔、未来芸人にも出てたしこれはホントにブレイク間近か??


こんばんわ。
なかやんです。

せっかく日本酒造ってきたのに最近はジンばっかり飲む日々です。
タンカレーうまし!!



えーっと前回はお米を洗って水に漬けるところまで書いたんでしたね。


今回はいよいよ蒸すところ。
最初の大きなイベントです。



まずは道具のご紹介。
蒸気を作るのは釜。

五右衛門が入ってたアレですね。
人が3~4人は楽勝で入れてしまうくらいのでかさ。

お湯が入った状態で、ここに落ちると即死は免れないでしょう。
危険が隣り合わせの職場です。周辺に近づくときは充分気をつけて・・・。


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         →これが、釜。
          使うときは蓋の上に甑(こしき・奥の白いやつ)を乗っけます。


この釜に熱を加えてもくもくと蒸気を発生させるわけですね。
家庭用蒸し器の一番下の部分、と考えてもらっていいでしょう。
たっぷりの水を張り、熱を加えて蒸気を発生させる部分。



そして、蒸し器でいう上の部分にあたるのが甑(こしき)。
実際に米を入れる部分です。下に穴があいており、釜から発生した蒸気が下から出てきて、米が蒸されるという寸法。




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         →これが甑。布が巻いてあるのは断熱のため。
          甑は金属製のため冷たい外気に当たると内面が結露してしまうのだ。
          結露するとその部分の米が水分過多になりべちゃべちゃに。
          そのためしっかりと断熱することが必要。




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         →甑底面部。
          ホントは左半分にも穴あきの板があるがわかりやすくするため取り外した。
          この穴あきの板から均等に蒸気がシューシューとでてきます。
          真ん中に見える小さく丸いのは「コマ」と呼ばれる部分。
          「コマ」の下が釜に通じており、釜から発生した蒸気は「コマ」を通じて
          穴あき板の下に導かれ、上に上がって米を蒸す。




そして、きっちり時間管理して浸漬させた米を甑の中にいれて蒸します。


まずは甑の内部に布を敷き(蒸し米を取り出しやすくするため。断熱の意味もある。)



どどーっと米を入れていきます。
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重たい米を100kg以上手作業で運ぶのはとっても大変。



んで、米をたいらにならしていきます。
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ほら、米の面がでこぼこしてるとするじゃないですか。
そうすると山になってる部分は蒸気が通りにくく、谷になってる部分は蒸気が通過しやすくなるわけ。要は米の層の薄い部分に選択的に蒸気が流れるってわけですね。

そうすると蒸しムラができるため均等にお米をならしていく必要があるわけです。
なるほど!一理ありますな!!


そして、上から布の蓋をし、熱を加えて一気にお米を蒸しあげます!
時間にして80分~90分くらい。



モクモクモク
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釜の上に甑が乗っかり米が蒸されてます。
甑の上にのった布の蓋は蒸気の圧力によってドーム状にぷっくり膨らんでるのがわかりますよね。
蔵の中には次第に米の蒸しあがったいい香りが立ち込めてきます。

さあ!仕事はこれからだ!!
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by umanichi | 2009-02-24 22:57 | 大人のできるかな  

日本酒できるかな その5 ~浸漬時間は科学的~

更新が滞っており申し訳ありません。


記憶が新しいうちに書き上げてしまわなければ・・・と思いつつ、なかなか時間がとれません。



さてさて、米を洗ったあとはお米を水につけておく工程。

水は鉄分を除去した水を使います。(鉄分が少しでもあると酒の色が変色する。これ酒造りの基本なんですって)


普通、ご飯を炊くときやもち米を蒸すときなんかは数時間以上お米を水にひたしますよね。
精米歩合が高い米を使う場合はこれと一緒。



ところが吟醸なんかの精米歩合が低い米でこれをやるとどうなるか。
精米歩合が低いってことはそれだけ米のツブツブの大きさが小さいということ。

つまりあっというまに中心まで水が染みてしまい、過剰に水を含んでしまう。

これを蒸しあげると、べっちゃべちゃの蒸し米になってしまいお酒にするにはむかないんですね。


理想的な蒸し米っていうのは中心までふっくら蒸されてる(デンプンがα化してる)にもかかわらず、指の腹でぎゅううっと押してもつぶれずゴムのような弾力を持った米。


こういう蒸し米を小さな米粒(精米歩合の低い米)で作るためには吸水率をしっかりと管理しなければいけません。


その日の米の状態、ひたす水の温度・・・吸水に影響を与える要素は様々。
いろんな要素を勘案し、浸漬時間を決定していくのが杜氏の重要な役割。

日ごろのデータの蓄積と職人の勘が要求される高度な技術です。


もちろん米を洗う時間にも米は水を吸います。
だから管理するのは【米を洗う時間】+【浸漬時間】なんですね。


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         →お米はこういう袋の中で洗って、浸漬します。
          ストップウォッチ片手にせーので水に入れ、せーので引き上げます。



日々の条件によって浸漬時間が変わるってのはさっき言ったとおり。
なので杜氏の決めた浸漬時間がかならずしもカンペキとは限りません。


そこでどうするか。


例えば100kgの米を準備するとして、その中の5kgの米を2つ(5kg×2=10kg)取り出す。

で、ためしにその2つを
① 【米を洗う時間】+【浸漬時間】=18分 のものと
② 【米を洗う時間】+【浸漬時間】=19分 のものをストップウオッチで正確にはかり準備する。

その2つの重さを測定して、浸漬前の重さと浸漬後の重さを比較し、吸水率を計算してその日の浸漬時間を決定する、という具合。

例えば吸水率15%を狙っていて、①の18分だと10%、②の19分だと20%になった場合、その日は残りの90kgを18分30秒で吸水させるんですね。




うーん。こりゃなかなか科学的ですな。
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by umanichi | 2009-02-22 11:03 | 大人のできるかな  

日本酒できるかな その4 ~まずはお米の準備から~

その3で書いたように、日本酒作りでまず最初にしないといけないのが蒸し米作り。


米といっても普段ボクたちが食べてるようなお米じゃありません。
酒造好適米と言って、お酒造りに特化してるようなお米。

山田錦とか五百万石なんかの銘柄が有名ですね。


そのお米をよ~~~っく精米したお米を使います。


普段ボクたちが食べてるお米は精米歩合約90%。
玄米のうち10%をヌカとして捨てて、あとの90%が食べる部分。


日本酒に使用する米は精米歩合70%や60%はザラ。
大吟醸クラスになると50%くらいまで米を磨きます。


中には精米歩合23%なんてお酒まであったりして。


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         →今回純米酒に使用した酒米。
          パールライスでこんな作業もしていたとは・・・!



そんな風に極限まで磨き抜かれたお米を、まずは最初に水洗い。


フィルタを通し、鉄分を除去した水でお米をキレイに砥いでいきます。
(鉄があると酒の色が汚くなってしまう)



普通のお米なら洗米機で出来ます。



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       →洗米機
        左下の茶色い木箱に米を入れると右中央部の銀色のパイプから
        洗われた米が出てくる。



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       →お米を入れているところ




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       →出てきた米は袋に入れます


 

ところが精米歩合が50程度以下の米になると洗米機では米が割れてしまう。
そこで、どうするか。


当然手洗いに。

冬の冷たい水で何十キロもの米を手で研ぐのはツラく、冷たく、正直しんどい。
でもここで手を抜いたらヌカ臭い蒸し米になってしまう。

洗う時間、研ぐ回数もきっちり計測しながらムラのないように、一日分全ての米を砥ぎ終わるまで約一時間。

水の冷たさで手のひらは完全に感覚を失う仕事。

それもこれも美味しいお酒のため。がんばらなければ。
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by umanichi | 2009-02-15 21:33 | 大人のできるかな  

日本酒できるかな その3 ~酒造りの概要~

アルコールがどうやって出来るかは皆さんご存知ですか?

日本酒に限らず、ほとんど全てのお酒は【糖】から出来てます。


高校の化学で習うことですが【糖】は分解されると【アルコール】と【二酸化炭素】に変化するのです。



ビールやシャンパンなんかのシュワシュワの二酸化炭素。

あれはあとから二酸化炭素を添加してるんじゃなくて【糖】から【アルコール】を作るときの副産物である【二酸化炭素】を封じ込めてるだけなんですね。



この糖を分解してくれるのが「酵母」
パン作りの時に使うドライイーストなんかも酵母の一種です。

この「酵母」がパクパクと糖を食べて二酸化炭素とアルコールを排出してくれるわけ。



つまり【糖】に「酵母」を加えると【アルコール】と【二酸化炭素】が出てくるのです。





じゃあ、その【糖】はどこから持ってくるのか。


ワインやシードルなどの果実酒は簡単ですね。
果物の中に【糖】が含まれてるから。


果実をつぶして「酵母」を加えてやればお酒が出来る。

実は葡萄の皮には「酵母」が自然に生息しているためワインなんかは取れたばかりの葡萄を潰してやるだけで自然と【糖】の分解が進みお酒が出来上がる。


非常に原始的なお酒と言えます。




一方日本酒はどうか。

原料の米には糖分は含まれてません。

しかし米の中に含まれているデンプンは分解されると糖になるんです。


小学校のときに実験したジャガイモにヨウ素をつけると紫色になるけど、唾液につけたジャガイモは紫色にならない・・・っていうあれですね。

唾液がデンプンを分解して糖にしてるから唾液につけたジャガイモは変色しない。



日本酒に唾液を入れるわけにはいかないので、デンプンを【糖】に変えてやるためには「麹」を使います。


つまり「麹」がデンプンを【糖】に変えてくれる。



以上の話をまとめると




              麹
              ↓
   【デンプン】 --------→ 【糖】 



              酵母
              ↓
   【糖】    --------→ 【アルコール】+【二酸化炭素】



この二つの反応を利用して作っているのが日本酒。



非常~に乱暴な言い方をすれば
水の中に蒸した米と麹と酵母を入れて、麹や酵母が繁殖するよう適切な管理をしてやれば日本酒が出来ます。



ってのは蒸したお米に麹菌を植えつけて作ります。


だから、日本酒作りのスタートはまず蒸し米作りから。
米を洗って、水に漬け、蒸す。


蒸し米の一部は麹菌を植えつけて麹を作る。


残った蒸し米は水と麹と酵母と一緒に発酵させる。


発酵させたものを絞ってろ過すれば日本酒が出来上がり。



これが日本酒作りの大まかなプロセスなんですね。
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by umanichi | 2009-02-12 09:34 | 大人のできるかな  

日本酒できるかな その2 ~蔵での生活~

板野酒造場は岡山市西部に位置する小さな酒蔵。

吉備津彦神社という桃太郎で有名な神社のほど近くにあります。



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        →隣接している店舗では小売もやってたりします。




年間の生産量はわずか100石から150石程度。
きびの吟風取扱量のほとんどは地元岡山で消費されてしまい、他県にはなかなか出回らないのが実情。特に愛知県で飲むにはかなり難しいお酒、と言えます。



なかやんの実家は岡山市東部。
蔵にお手伝いに行くときには朝5時に起きて、すぐに支度を整え板野酒造に向かいます。



蔵に着くと、まずは控室に。

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          →控室
           ここで着替えたり、休憩したり、暖を取ったり。


ここで全員が揃うのを待ちます。



全員が揃ったところでI野さんの「よっしゃ、行こうか」との声がかかり、全員で蔵の中へ。ピーンと張り詰めた冬の空気の中に入っていくと自然に背筋がのびます。

もちろん蔵の中にはほんのりと日本酒のいい香りが。




紙の帽子をかぶりマスクをしたら、もちろん手洗いと消毒を。

なかやんは食品関係の仕事に従事したのは初めてだったのでオドロキだったのですが、ホントに彼らはよく手を消毒します。ちょっと作業をしたら手洗い、部屋を移るときにも手洗い。もちろん手洗いにはセットでアルコール消毒付き。
一日に何十回と手を洗うこともザラです


おかげで手の脂はすっかり抜けきってカサカサに。
一週間もいると手の皮はボロボロになってしまいます。


食品関係は全般的に清潔を旨としているのでしょうが、特に雑菌に対してナーバスな醸造関係の仕事は雑菌撲滅のために想像以上の労力を払ってるんですね。


意地は汚くても指だけはキレイだったなかやん。
修行の間にすっかり指まで汚くなってしまいました^^;


しかしやっぱり酒作りでは清潔は全てにまさり優先される事項なのですね。

作業の空き時間が少しでも出来れば水洗、消毒、掃き掃除。
冬の冷たい水で道具洗いするのは思った以上にツライ仕事。

でもそれもこれもみんな美味しいお酒のため。がんばらなければ。





一般的にお米がお酒に変わるまでは約30~40日。
従って何種類ものお酒を作る(普通酒、本醸造、純米、吟醸・・・など)場合は毎日違うお酒の作りをスタートしてやるわけです。

【イメージ】
   ▽:初日  
   ▼:最終日


純米酒:  ▽-----------→▼

吟醸酒:     ▽------------▼

大吟醸:         ▽------------▼


この絵で言うと大吟醸の初日には吟醸酒の5日目、純米酒の8日目の仕事も平行してやらなければいけない、ということ。

つまりお酒の種類が増えれば増えるほど同時平行的に多様な酒の管理をしなければいけない、ということ。

コレ、やってみなければなかなか実感はわかないでしょうが結構骨が折れる仕事です。





骨が折れると言えば力仕事も。
なるべく人の目が行き届くようにと、必要以上の機械化は行っていない昔ながらの酒蔵。

特に原料の米や麹の運搬は出来るだけ丁寧に扱わなければならないため、ほとんどが人の手によることが多いです。

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          →これが一日に使う米。
           一袋は30kg。
           家庭用の米袋が普通10kgなのでその3倍。
           その袋をこれだけ。これ全部人力で運びます。
           運び終わったら腕も腰もパンパン。




また安定した品質を保つためには徹底した温度管理と計量が欠かせません。
固体物質を扱ったことのある人は分かってもらえるかと思いますが、固体の温度管理ってのはホントに難しい。

ホラ、できたばっかりのオニギリって表面と真ん中で温度が違うじゃないですか。
じゃあ、どこの温度を測ればいいのか、ってそれがなかなかわからない。

経験と勘がものをいう世界です。
うーん。この辺がやっぱりプロの世界なのかな。







それにしても「清潔」「力仕事」「細かな計量・計測」などなどなかやんの苦手分野のものばかり。

果たしてこんな人間に酒造りが務まるんでしょうか。

不安と期待が交錯しながらも酒造りは続いていきます。


次章からはいよいよ各工程の解説を。

お楽しみに!
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by umanichi | 2009-02-10 23:18 | 大人のできるかな